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法曹コースの設置等は制度矛盾・自己否定では?!

2020.01.28

 

  法学部3年プラス法科大学院2年の法曹コースが設置され、法科大学院在学中に司法試験を受けられるように法曹養成制度が改変されることが閣議決定で決まりました。

 これまでは、大学を卒業してから、2年間ないし3年間の法科大学院で研鑽を積み、法科大学院を修了して初めて、翌年の司法試験を受けることができました。
すなわち、これまでは、法学部入学から法曹になるまでに最短で8年かかった(学部4年、法科大学院2年、1年間の間に司法試験を受け、1年間の司法修習)のが、今回の制度改正で法科大学院制度を経由しても最短6年間(法学部3年間、法科大学院2年間の間に司法試験合格、その後1年間の司法修習)で法曹になることができるようになりました。

しかし、この法曹養成制度の改変は、法科大学院制度の制度趣旨と矛盾します。

 法科大学院制度は、非法学部出身者や社会人経験者など多様な人材を法曹にするための給源としての機能を果たすために必要ということで設けられたはずです。
また、司法試験を「点」による選抜から「線」による選抜へというプロセスによる法曹養成との一応のスローガンも掲げられていました。
そして、法科大学院を修了したときには、法曹になるための素養ができているという建前でした。

 今回の法曹養成度の制度改変で、法学部出身の学生は法曹コースに乗れば、時間的に2年も短縮された6年間で法曹になれます。
  非法学部出身者あるいは社会人経験者は、4年生大学を出た後に3年間の法科大学院を経た後に司法試験を受け、1年間の司法修習を終えて初めて法曹になれます。すなわち、最短で8年間を経なければ、法曹にはなれません。

また、法科大学院在学中に司法試験を受けるためには、一定の成績を収める必要があるのですが、非法学部出身者や社会人経験者等が短期間でそのような成績を収めるのには一般的に言って大きな限界があります。

法学部出身者の方が圧倒的に優位に立てます。

  そもそも法科大学院制度に移行して以後、非法学部出身者や社会人経験者等(法学)未修者の合格率は低く、そのためか、非法学部出身者や社会人経験者等いった純粋未修者の割合は、年々下がっていました。

  この法曹コースの設置は、法学部出身者とそうでない方との優劣の差を益々広げ、非法学部出身者や社会人経験者の割合の減少に拍車をかけかねません。

 新しい法曹養成制度は、法曹給源に多様性をもたらすためとの法科大学院制度の趣旨と矛盾するのです。

  さらに言えば、法科大学院在学中に司法試験を受けられるとすると、「法科大学院を出れば、実務家法曹にふさわしい資質を身に着けることができる。」との法科大学院の文句とも反します。法科大学院を修了しなくても実務家法曹にふさわしい資質が身に着けられることを認めたに等しいのですから。
 最短期間であれば、法科大学院1年しか授業を受けずに2年目の春頃から、司法試験が受けられることになるのですから、極論すれば、法科大学院制度の教育は、1年しか必要ないというに等しいでしょう。
  そうであれば、実質的には、何故莫大なお金を必要とする法科大学院制度を強制しなければならないのでしょうか。

 法曹養成としてのプロセスや「線」による法曹養成などといった法科大学院の制度趣旨がいかにお題目に過ぎなかったかが今回の制度改正で露呈したといえるでしょう。

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