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「受験エリートが医学部に殺到!」(週刊現代)

2016.04.12

 

 週刊現代の現代ビジネスに「受験エリートが医学部に殺到「弁護士・会計士はもう食っていけないから医者ひとり勝ちの時代、その不幸(上・下)」という記事が載っています(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42805)。

 その記事によると、

 「いまどき弁護士や会計士になったって、働き口もなければ高収入も望めない。」

 「昔は、「勝ち組」の職業といえば、弁護士や会計士がその代表格だった。」

 「ところが一転して、法学部の志願者数は10年前と比較して6万人も減少。」「以前の花形だった弁護士や会計士を目指す学生は、激減している。」
 
 「弁護士の資格を取ったはいいけど働き口がない、開業しても顧客が取れなくて年収200万円なんて言っている人はいくらでもいる。弁護士はダメだ」
(引用終わり)

とのことです。
 
 法学部生が6万人も減っているとは驚きですが、職業として成り立たない以上、学生が目指さなくなるのは当たり前のことだと思います。

 日弁連は、弁護士としての職業的魅力を訴えて法曹志願者を増やす政策を進めるそうです。

しかし、職業として素晴らしいのは、弁護士という職業だけではありません。
 
あらゆる職業が人の役に立つ社会的に重要な仕事であり、弁護士という職業と同じかそれ以上に貴い職業なのです。
 「弁護士としての職業的魅力を訴えて法曹志願者を増やす」というのは、他の職業を見下している心根があるからにほかなりません。それはあんまりではないでしょうか。

 弁護士の仕事は、人権保障・社会正義の実現を実感することができ、しかも困っている依頼者からも感謝される等やりがいのある職業です。

 日弁連の臨時総会でも若い弁護士が「我々は収入が高いことを期待して弁護士になったのではない。弁護士という職業にやりがいがあるからなったのである。先輩弁護士から経済的心配をしてもらう必要はない。」といった発言をしておられました。
 
 しかし、この発言をするのであれば、依頼者からお金を取らず、弁護士業務をボランティアやるべきでしょう。
ボランティアでやっても弁護士としてのやりがいは変わらないはずですし、そうすれば、依頼者にもっと喜んでもらえるはずです。
 依頼者から弁護士費用を取りつつ、「報酬が少なくても弁護士をやる価値がある。」等あたかも生活の糧を得るために弁護士になったのではないかのごとき発言をするのは趣旨一貫していないと思います。
 
 この発言を聞いて勇ましく、頼もしい発言と単純に喜ぶことは困難です。

 弁護士は、自らの家族も養えないのに、さらには、自分の抱えた借金に汲々としながら、ストレスを依頼者と共に背負い、苦労をすることを厭わない聖人君子ばかりで構成されているわけではないからです。
 
 弁護士と言っても凡人です。
 
 弁護士バッジを付けた瞬間にスーパーマンに変われるわけでも、人格者になれるわけでもありません。
 
 そして、我々は制度を問題にしているのです。

 制度としていかに多くの法曹志願者を確保し、その中から法曹になる人を厳選することで入口で法曹の質を確保し、さらには法曹養成を充実させることで法曹の質を向上させる方法を問うているのです。

 家族を路頭に迷わせようと、赤字経営が続き、自らが借金苦にあえぎ続けたとしても、法律専門家としての高い質と倫理観を維持しつつ弁護士をし続けることのできる例外的な人を想定していたのでは、制度としては破綻してしまいます。
 
 個別の特異な事例を挙げても我々の司法改革批判に対する反論にはなりません。

 我々は、そのような普通人を超えた奇特な人を想定しなければ、維持できない司法改革の制度設計自体の誤りをこそ指摘しているのですから。
 
 法曹志願者を増やすには、弁護士の職業的魅力を訴えるだけでは無理があると思います。
 

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