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法曹人口問題に真正面から取り組むのは誰でしょう?!

2012.03.09

 

 山岸憲司氏から選挙の葉書が届いていました。
 
 葉書には、「法曹人口問題、法曹養成問題に真正面から取り組み合格者の減員を実現するには、新しい手法が必要です。」と書かれてあります。
 山岸氏が会長になったら、本当に法曹人口問題に真正面から取り組むつもりがあるのでしょうか。
 先日も書いたとおり、司法試験合格者数の減員を主張していたかに見えた某候補者が選挙に落選した直後、舌の根も乾かないうちに日経ビジネスに3000人堅持と書かれたことは記憶に新しいことです。

 私は、日弁連法曹人口政策会議において、これまで何度も何度も「日弁連の司法改革路線は間違っていたのだ。日弁連がこれを認めて真摯に反省するとの言葉を言って政策を180度転換しない限り、日弁連が何を言っても説得力がない。」と申しあげてきました。

 過去の日弁連執行部路線の方々(旧主流派)が自らの過去の間違いを口にして反省することなくして、一体全体どうしたら政策の劇的な転換ができるというのでしょうか。
 
 ところが、山岸氏は、過去の日弁連旧主流派の路線を反省するどころか、選挙公報で「国民が弁護士を見る目はいまだ厳しく、増員ペースダウンについてあまりに性急な主張をすれば、利用者の視点から乖離した既得権益の擁護である、との謂われなき批判を受けかねません。」と過去旧主流派が言ってきたことを性懲りもなく繰り返しておられます。

 まずもって「性急な主張」という部分が全く理解できません。

 一括登録時における未登録者数が400名を超え、即時独立弁護士や事務所内独立採算弁護士といった就職の見つからない弁護士が700名程度に上り、今年はおそらく1000人程度の就職先のない弁護士がでることが予想されるのです。その結果、オンザジョブトレーニングの問題がより一層深刻化するというのに、何をもってして「性急な主張」と言われるのでしょうか。

 次に、「既得権益擁護論」ですが、この部分は「弁護士が叩かれたくないから、或いは、悪者になりたくないから、正しいことであっても、市民に弊害を与えることになっても言わない」と真正面から言っているに等しいでしょう。弁護士が悪者になっても、叩かれても司法制度について正論を意見できるのは弁護士以外にいないのですから、正しいと信ずることに従い発言すべきです。
 
 そもそも選挙公報というのは、弁護士に向けて書いている文章です。

 そして、反司法改革の人達が自らの既得権益を擁護するために主張しているのでないことは、弁護士の中では既に周知の事実です。
 
 にもかかわらず、山岸氏が既得権益擁護論を敢えて選挙公報に指摘しているのには、2つの効果を狙ってであると思われます。

 1つは、ご自分が日弁連会長選挙に当選された時に司法試験合格者数を減らす政策を採らないための自己弁護を今から予防線として明示しておくためでしょう。

 そして、もう1つは、弁護士に向けて「司法試験合格者数の減員を叫ぶ者は既得権益を擁護するとの批判を受けるからそのような主張をしないように」との言論封殺の効果を期待してのことだと思います。

 司法改革が叫ばれた時、司法改革に反対する弁護士は少なからずいました。
 でも、「司法改革に反対する者は、自らの既得権益を擁護することしか考えない悪徳弁護士」とのレッテル貼りをされました。
 そのため、司法改革に反対する人達は、皆口をつぐみ、我々のように反対の声を出していた弁護士は弁護士の中でまさに「非国民」扱いをされました。
 
 しかし、司法改革による社会的弊害が顕著になってきたここ数年で私達はかなり自由に発言できるようになりました。勿論、まだ完全に自由に発言できているわけではありません。しかし、12年前と比較すると隔世の感があります。
 
 そして、下火になってきた既得権益擁護論をまたぞろ出してくることにより、レッテル貼りを思い出させることにより12年前と同じように反司法改革論者の口を封じたいということなのでしょう。

 山岸氏には法曹人口問題に真正面から取り組むつもりがないように見えるのは、私だけなのでしょうか?


 

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