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アメリカの医師と日本の法曹

2011.11.20

 

 シカゴのメイヨー・クリニックのColin.P.Wes博士氏の研究によると、全米の4分の3の内科研修医を対象に調査した結果、高額の学費ローンを抱える医師は情緒的な疲労による燃え尽き症候群に陥る人の割合が高いことが判明したそうです。

 アメリカの学費が高いことは、社会問題になっており、人種差別や貧困の連鎖等から這い上がろうとしても、学歴がなければ良い職は見つからないということで皆無理をして高額な学費ローンを組み大学に入学するそうです.ところが、やっとの思いで大学を卒業しても良い職が見つからず、その結果、学費ローンから免れるために嫌々軍隊に入隊する人も多いということが堤未果氏の「貧困大国アメリカⅡ」という本に書かれていました。                                           
 アメリカでは、医師もご多分に漏れず、多額の学費ローンを抱えている人も多いようです。そして、学費ローンを抱える医師は、学費ローンが高額になるほど、情緒的疲労又は離人感を訴える割合が増加するそうです。
 例えば、ローンのない研修医と比べて20万ドルを超えるローンを抱える研修医との比較では、情緒的疲労を訴える割合が59%、離人感を訴える割合が80%、燃え尽き症候群の症状を訴える割合が72%高くなるとの研究結果がC.P.West博士氏らの調査で出ました。

 常識的に考えても予想される結果ですが、それが統計的に証明されたということは大きいと思います。

 日本でも、法科大学院制度が新司法試験の受験資格となったことから、司法試験に合格するまでに1000万円以上の奨学金(=借金)を抱える人はもはや珍しくなくなりました。

 私の聞き及んだ中だけでも、約1500万円前後の奨学金等借金を抱えて弁護士になった人が3人もいました。

 更に、給費制がなくなり、貸与制に移行すれば、法科大学院を卒業し、司法試験を受けるまでに抱えた借金の上に、司法修習生時代に貸与される生活費等借金300万円以上の負債が上乗せされることになります。

 1000万円から2000万円の借金を抱えた我が国の法曹がアメリカの医師と同様に情緒的疲労、離人感を訴え、燃え尽き症候群に陥るであろうことは、容易に想像がつきます。

 その結果、そのしわ寄せが来るのは、結局、市民なのです。

 司法修習生の貸与制には絶対に賛成することはできません。

 そして、修習生の貸与制以上に、法曹を目指そうとする人達に経済的負担を掛ける法科大学院制度も廃止すべきだと思います。

 少なくとも法科大学院卒業資格を司法試験の受験資格からは外すべきです。
 
  

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