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司法改悪による質の低下

2010.12.09

 

  和歌山県の元会長が保釈保証金130万円を着服し、逮捕されたとの報道がありました。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20101205k0000m040064000c.html

 昔なら、少し頑張れば稼げていた金額のはずで、司法改革が始まる前には、このような事件が頻発することはなかったと思います。「自由と正義」との雑誌には、3人の弁護士が会費滞納により処分されたことが発表されていました。3人は6年間の会費滞納ということでしたので、司法改革が始まってから会費滞納が始まったということになります。

 勿論、このような不祥事の原因の全てが司法改革というわけではないでしょうが、やはり司法改革による質の低下の一側面と評価せざるを得ないでしょう。

 「悪いことをするのは、中堅以上の弁護士である。『質の低下』は、司法改革の舵を反対に切る理由にはならない。」という議論があります。

 しかし、私達が言っている「司法改悪は弁護士の『質の低下』によって市民に弊害をもたらす。」との議論は、若手弁護士のことだけを言っているわけではありません。
 若い弁護士は、事件も顧客も少なく、多額のお金を預かる機会は中堅以上の弁護士ほどはないですし、若い弁護士は事務所経営についても、もともと収入がないことを前提とした緊縮財政で取り組んでいます。
 よって、司法改悪の歪みとして、まずは、中堅以上の弁護士の不祥事が多発することから始まるのは道理なのです。

 昔から「貧すれば鈍する」というではないですか。
 
 NHKの報道で「急増する弁護士トラブル」との番組では、弁護士の報酬トラブルや犯罪に近いような業務がリアルに報道されていました。その番組の中では、弁護士に対する市民からの苦情や相談が司法改革が始まってから6倍に急増したことや非合法的組織が弁護士を利用しやすくなったことなどが報道されていました(http://diamond.jp/articles/-/9334参照)。

 「経済的に困っているのは、或いは、就職難は、弁護士だけではない。」と言う議論もあります。このこと自体間違っているわけではありません。しかし、この議論は弁護士の職業の特質を見落としていると言わざるを得ません。 
 弁護士は医者と同様、直接人権を扱う、一歩間違えばきわめて「危ない職業」なのです。他の職業の権限濫用による人権侵害の危険もあるにはありますが、弁護士とは、その危険及び結果の重大さにおいて比較にはならないでしょう。
 昔、某新聞の社説に「合法的に人権を侵害できる職業が3つある。それは、国会議員と医師と法曹である。」旨の議論がありました。全くその通りでしょう。

 それにしても、司法改悪を進めた人達は、何時になったら現実を直視し、責任を取るつもりなのでしょうか。

 残念なのは、そのような気配が全く認められないことです。

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