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報告:長野県弁護士会会員集会

2010.07.03

 

 先週の土曜日、長野県弁護士会の法曹人口問題についての会員集会に行って来ました。

 最初の40分は山本剛嗣先生が講演をされ、その後の40分間を私が講演をして、最後に会員間との意見交換や質疑応答が行われました。
 
 山本先生は、当初、過去の法曹人口問題の経緯を説明され、その次に「サービス残業なんかに市民の需要がものすごくある。市民がサービス残業の請求をしてもいいと思うようになっても、今の弁護士の数では、市民がうわっと駆け込んでも対応できない。」「サービス残業を請求したら辞めさせられるのではないかと思ってなかなか訴えられない。でも、法律上そんな理由で辞めさせられることがないと知れば、どっと弁護士のところへ押しかけてくる可能性がある。」「そのよう需要を救い上げるには、弁護士の増員と扶助の拡大が不可欠。」「救われなければならない人、泣き寝入りを強いられている人が今の日本にはたくさんいる。」「ただ、今の状態では、2000人も排出しないのではないか。」「『質を維持しながら増やす』という最初の理念が思った方向に行っていない。」「減らすといっても法科大学院を存続させる程度の人数を輩出する必要がある。」 「今の状態では5万人は必要ない。」「中国では、昨年だけで8万人の弁護士が排出された。グローバル化対応のためには弁護士数の増加が必要。」等々仰っていました。

 この山本先生の話には、細かい部分では理論的にたくさん突っ込むべき部分があり、それについて論ずると長くなるので、別の機会に譲るとして、一番の問題は、弁護士の仕事を単なるビジネスと捉えておられるところだと思います。
 
 「弁護士を増やして、ビジネスチャンスをつくり、ビッグチャンスを確実に弁護士が手中に収めるのだ」そんな風に聞こえて仕方ありませんでした。
 既に過払返還請求事件は収束しつつありますが、「過払事件の次は、サービス残業だ。」といわんばかりです。
 
 でも、私達弁護士の仕事は、単なるビジネスとは違います。
 第一次的には、依頼者の人権や社会正義のために働いているのであって、金儲けの手段ではないはずです。一部の渉外弁護士や企業法務系の弁護士は別かもしれませんが、その他の一般の弁護士(いわゆる町弁)が自分の仕事を金儲けの手段としてしか捉えなくなってしまったら、その社会的使命を果たすことが困難となってしまうのではないでしょうか。

 司法改革を始めるとき、「司法改革をして、広告規制を撤廃し、弁護士を増やしてこれからビジネスマンになるのです。」と恥ずかしげもなく言われた弁護士がいました。
 私はその時から、司法改革との闘いを決意したわけですが、未だに司法改革の底流にこのような発想が流れていることに驚きを禁じえませんでした。



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