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検査すればよいというものではない(その2)

2020.04.10

 

3.PCR検査がどれほど本当の新型コロナ患者を検出するか
 PCR検査を日本人全てに行った場合、どのようなことになるでしょうか。日本での新型コロナの患者が、数百人だった頃から一部には「全数検査」だとか「希望者全員を検査」すべきだとの主張がありました。そこで、日本全体で、本当の新型コロナの患者が千人だった場合、一万人だった場合、10万人だった場合、100万人だった場合で、PCR検査がどれほど本当の新型コロナ患者を検出するかを考えてみましょう。
 それぞれの場合、わかりやすいように、本当に新型コロナにかかっていない日本人の数は、全部1億人と仮定します。日本の総人口は、一億二千万人弱ですから、そこから千人を引こうと100万人を引こうとたいした差はありません。大体の感じがわかればよいと思います。
 とりあえず新型コロナの患者が1万人の場合を考えましょう。その1万人全員に、PCR検査をすると、感度が70%ですから七千人が新型コロナ陽性になり、三千人が新型コロナ陰性になります。この三千人が「偽陰性」です。
 残りの新型コロナではない1億人にも、PCR検査をすると特異度が99%ですから9900万人が新型コロナ陰性になり、100万人が新型コロナ陽性になります。この100万人が偽陽性です。これを表にすると下のようになります。

新型コロナ患者1万人非新型コロナ患者一億人
PCR検査陽性 7000人100万人100万7000人
PCR検査陰性 3000人9900万人9900万3000人
     合計 1 万人1億人

 ここから、日本人全員にPCR検査をすると新型コロナ陽性の人が100万7000人出て、そのなかで本当に新型コロナの患者は七千人となります。PCR検査で正しく新型コロナ患者と的中するのは、0.69%になります。こんな検査は実施する価値がありません。
 同様に、日本の新型コロナの患者が千人、10万人、100万人のときのPCR検査での的中率は大体以下のようになります。
 千人:0.007%
 10万人:6.5%
 100万人:41%

 よって、新型コロナの患者が10万人ぐらいまでは、全員に検査したところでPCR検査が陽性になる人はほとんどおらず、たまに陽性になっても10人中9人以上が偽陽性で、本当の新型コロナの患者は一人いるかいないかという状況になることがわかります。これは、医療のリソースを無駄にするだけではなく、新型コロナに関するデータを大きく狂わせることにもなるでしょう。検査をたくさんすれば、データが正確になるという議論をされている方がいましたが、そんなことはありません。
そのような無駄をさせないためには、新型コロナ患者である可能性の高い人に絞ってPCR検査をしなければなりません。新型コロナ患者との濃厚接触者であるとか、4日熱が出ているとかの基準で検査対象を絞ることは、正しいばかりではなく、現場の混乱を防ぐため是非とも必要なことです。
 新型コロナの患者が100万人ぐらいになると、的中率が4割ぐらいになりますので検査対象を広げてもよいかもしれません。ただし、その場合は偽陰性の人が30万人出ることになるので、別の対策が必要でしょう。検査は決して万能ではありません。

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