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「日本最難関資格、弁護士の悲惨な現実」という記事

2016.07.16

 

  オンラインプレジデントに「弁護士の給料半減! 年収200万~300万も当たり前の悲惨な現実 日本最難関資格、弁護士の悲惨な現実」と題する記事が掲載されました。以下に同記事の抜粋を掲載させて戴きます。

              記
(抜粋はじめ)
  「日本弁護士連合会が作成している「弁護士白書2015」」によれば、「弁護士の「所得の中央値」は「2006年の1200万円から、2014年には600万円と、」弁護士の所得は「キレイに半額になっています。」
 「700万円弱といえば、社員数1000人以上の大企業における、大卒・大学院卒者の平均年収とほぼ一致する水準です。1200万円といえば、同じく大企業の部長クラスの平均年収となります。2008年当時は大企業の部長並みだった年収が、わずか6年ほどの間に、全社員の平均水準くらいにまで下がったということになります。」
 「平均で捉えると、まだ食べていける水準ではありますが、実際には数千万、あるいは億を稼ぐ人もいる業界です。反対に、年収200万円、300万円といった低所得者も少なくないのです。」
 「なぜ弁護士は、儲からない職業になったのでしょうか?答えは明らかで、弁護士の数が増えすぎたのです。」
 「多くの日本人にとっては、むしろ「幸運な見込み違い」といえるのではないでしょうか。アメリカのように、すぐに訴訟を起こす社会、弁護士が自己PR合戦を繰り広げる社会が、決して日本人が望む幸福な世の中だとは思えません。」
(抜粋終わり)

  同記事の内容は一か所を除いてきわめて合理的内容だと思います。

  内容に合理性が欠ける部分は、会社員との単純比較している部分です。
  会社員は、有給や病気休暇もあれば、退職金もあります。退職後は、企業年金もあります。
  これに対し、弁護士には退職金もなければ有給や病気休暇もありません。企業年金もありません。病気で休んでも高額の事務所経費がかかりますので、収入が途切れるだけで済まず、病気休業の間でも必要な事務所経費はすべて赤字としてのしかかってきます。

  これらの条件を加味すれば、弁護士の所得が会社員と同じであるということは、会社員よりもかなり条件が悪いということを意味します。
  同記事は、この点の視点が欠けています。

  同記事のその他の部分、すなわち、①弁護士の収入が激減し、かなりの低所得弁護士が出てきていること、②弁護士の所得激減の原因が過剰な弁護士供給にあること、そして、③弁護士の所得激減=弁護士に対する需要がないことは市民にとって必ずしもデメリットをもたらさないことなどを指摘しており、これらの部分はきわめて正しいと思います。
  司法改革を無理に進めようとする人たちの中には、弁護士の収入が激減していること自体を否認する人達がいます。また、弁護士の所得激減を弁護士の過剰供給にあることを否認する人達もいます。或いは、弁護士のやみくもな供給が市民に幸せをもたらさないということを認めようとしない人達も山ほどいます。


  このような御託を並べる方々の主張に対しては、現実が答えを出しています。
  法曹を目指す若者がいなくなりつつあることです。
  今年の法科大学院入学者は、ナント全国合わせても1857人しかいませんでした。
  ピーク時の平成18年法科大学院入学者数は、5784人でしたから、ほんの10年間で法科大学院の入学者数は、実に3分の1に激減したのです。

  この点、弁護士の仕事の魅力をもっと伝えるべきとの意見があります。
  弁護士の仕事にやりがいがあることは、皆よくわかっています。
  司法改革が始まるまでは、弁護士の魅力をことさら喧伝しなくても法曹を目指す学生は増加していたのですから。

  しかし、どんなにやりがいがあっても赤字経営で家族の生活費も捻出できない。自分の生活さえままならないといった状況が起こり得るかもしれないのに、しかも、法曹資格取得のために法科大学院の学費と生活費等莫大な投下資本がかかるのに、一体全体誰がどうやって法曹を目指すというのでしょうか。

  職業として成り立たないものを目指せと喧伝するのは、あまりに無責任でしょう。

  更に言えば、「弁護士の仕事の魅力を伝えきれていないから法曹を目指す人が減っているのだ。」という意見は、「教えなければ、学生は弁護士の職業的魅力がわからないのだ。」と学生を馬鹿にしている意見だと思います。


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