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法科大学院が生き残る道

2014.12.01

 

 12月4日付の週刊新潮に藤原正彦先生が、小学3年生から英語教育を始めることを決めた文科省の姿勢に対して「小学校での英語教育とは、我が国がグローバリズムという名のアメリカ主導の世界支配に加担すること」等非常に的を射た批判を展開しています。
 その中で、藤原先生は、「幼い頃から英語を学び英米人に教えられるということは」「子供たちが日本の文化、伝統、情緒、道徳の素晴らしさを認識することを妨げ、すでに国民病となりつつある米英へのコンプレックスを助長する結果となる」と指摘しています。
 藤原先生は「小学校の英語教育導入を主張する人たちのほぼすべては英語ができず国際人でもない」と断言しておられます。
 
 コンプレックスと言うのは、得てして人を強く突き動かすようです。
 司法改革もその一面があったのではないかと思っています。
 コンプレックスのために目が曇って正論が見えないことは人間にとって避けられない、悲しい「サガ」のような気さえします。

 ところで、予備試験の受験制限の方は、正面切って制限することは難しいとの政策判断が支配的になりつつあるように見えます。
 かといって、予備試験を無制限に認めたくはないようで、結果、予備試験合格者数がきわめて制限されています。その証拠に今年の予備試験合格者数は356人と平成25年度の合格者数(351人)とほぼ変わらない数字に抑えられました。
 昨年の予備試験合格者で今年の司法試験を受験した人243人の司法試験最終合格者数163名の占める合格割合は7割弱です。これに対し、法科大学院ルートで司法試験に最終合格した人の割合は2割強です。
 なお、予備試験に合格しても日程の都合上、次年度の司法試験しか受験できません。このように、時期においても予備試験は不当に抑圧されていると言えます。

 平成20年3月25日の閣議決定では「法曹を目指す者の選択肢を狭めないよう」「同一の基準により合否を判定」し、「予備試験合格者に占める本試験合格者の割合と法科大学院修了者に占める本試験合格者の割合とを均衡させ」「予備試験合格者数が絞られることで実質的に予備試験受験者が法科大学院を修了する者と比べて、本試験受験の機会において不利に扱われることのないようにする等の総合的考慮を行う。」とされています。
 現状は、前述したとおり、司法試験の最終合格率において予備試験組が7割弱・法科大学院組が2割強と著しい不均衡が生じているのですから、明らかな上記閣議決定違反です。
 予備試験の受験制限は法律改正が必要ですが、予備試験合格者数を絞ることは法律改正がなくても行うことができます。そのため、予備試験を制限したい人たちからすれば、何とか予備試験合格者数を絞りたいとの欲求にかられます。

 予備試験合格者数を少人数に制限し続けると予備試験組にプレミア感が増すわけですから、優秀な学生は益々予備試験ルートを辿ることになり、法学部や法科大学院から予備試験に合格した学生が早期退学していきます。また、予備試験組の合格者は就職等で優遇され、格差が広がるように思います。 
 他方、予備試験の受験制限をすると、法科大学院を予備試験に合格できなかった時のための「保険」として利用する学生がいなくなり、やはり法科大学院入学者数は激減することになるでしょう。

 結局、法科大学院の生き残る道は、司法試験受験要件からの脱皮、法曹資格獲得の手段以外の道を模索するほかないように思います。

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