最新情報詳細 一覧へ

< 一覧へ

浜辺陽一郎氏の発言

2013.05.19

 

 シュルジーさん(http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52020730.html#comments)や元「法律新聞」編集長(http://kounomaki.blog84.fc2.com/)のブログにもありますが、浜辺陽一郎氏の発言には,ただただ呆れるしかありません。あまりご存じでない方のために浜辺氏の発言を下記に引用して意見を申し上げます。

(引用はじめ)
 「今年の法科大学院入学者が2,698名しかいなかったのに、司法試験予備試験受験生は1万人を超えるとの報道。日本の法科大学院の学費などは、アメリカのロースクールと比べれば全体として遙かに安く、経済的負担はかなり軽減される仕組みがあるのに」(引用終わり)

 →アメリカの場合、弁護士になるまでの平均的借金額が1000万円とも2000万円とも言われています。これに対し、弁護士になるのに日本での借金平均額は700万円(修習生時の貸与分を含む)と「アメリカのロースクールと比較して借金額が安いから我が国の制度は良い」と言えるのでしょうか。下を見ればきりがありません。しかし、我が国よりもより悪い制度が他に存在するから、我が国の制度は良いと結論付けるのは暴論でしょう。皆、より良い司法制度を構築するように検討を重ねているのではないでしょうか。

(引用始め)
 「いろいろ理由をつけて予備試験受験者がこれほど多いのは、いかに司法制度改革のことも知らず、手前勝手に「自分だけはできる」と勘違いしているか、とにかく早道でエリートの切符がほしいという人が大勢いるということを示している。心の貧困によるものか、または何も知らないで司法試験を目指す人たちが、こんなに多くいるなんて・・・。どういう気持ちで予備試験を受けているのか、よく調べてもらいたい。」(引用終わり)

 →年々法科大学院受験者が激減する一方で予備試験受験者が増えている現状をどのようにとらえるのかは各自の自由です。ただ、浜辺氏ご自身が「どういう気持ちで予備試験を受けているのか、よく調べてもらいたい。」と述べておられるように、上記記載は予備試験受験生を調査した結果でないことがわかります。実態調査もせずに何らの根拠も示さずに予備試験受験生のことを「手前勝手に「自分だけはできる」と勘違いしている」とか「とにかく早道でエリートの切符が欲しい」等軽蔑するような表現を用いるのは、不合理ではないでしょうか。
 法科大学院は、学費が高く、仕事との両立が困難で、加えて4年大学を修了していなければならないとの学歴上のハードルもあります。このような参入障壁(法科大学院制度)を避け、予備試験に流れるのは至極当たり前の自然な流れです。その予備試験受験生の実情を調査せず、何の根拠も示さずに「心の貧困」等と見下した表現を用いて批判するのはいかがなものでしょうか。教育者とは思えない発言だと思います。

 また、司法制度改革が始まり、法科大学院ができて10年も経つのです。
 司法試験受験生ないし予備軍である学生が低脳或いは調査不足とは思えません。多くの方々が法科大学院制度の動向を見極め、司法制度改革の中身をよく知るようになった結果、年々法曹志願者や法科大学院入学者数が激減し、予備試験受験者が増え続けているのです。にもかかわらず、調査もせず、何らの根拠も示さずして、予備試験受験生をして「(司法改革について)何も知らない」との前提で受験生を非難するのはいかがなものでしょうか。
 予備試験受験生を批判したからと言って法科大学院入学者が増えるわけではないでしょう。

(引用はじめ)
 「もちろん、ごく一握りの人たちは、何やってもできますが、そんな「ペーパー試験合格」の一発屋を社会が望んでいるわけがないでしょう。」(引用終わり)

 →法科大学院制度ができる前の法曹もペーパー試験の「一発屋」ではありませんでした。4年大学を出て後、各自でゼミを組み、司法試験合格後も2年の司法修習制度を経て3年から5年間の「イソ弁」を経験し、その間、ボス弁、或いは、弁護士会全体で手取り足取り教えてもらう等オン・ザ・ジョブトレーニングの過程を経て1人前の弁護士になっていきました。今は、法科大学院を修了しても1年の司法修習しかなく、しかも修習内容は手薄でイソ弁先どころか(給与がなく机だけを置かせてもらえる)「ノキ弁」先さえも見つからないため、プロセスとしての法曹養成制度が完全に崩壊しています。

 また、ペーパー試験は、法曹資格を問う上で必要不可欠な能力試験です。
 法的知識を問うには、書面審査が一番だからです。法的知識がない、あるいは、準備書面を書けない、法曹としての能力に問題ある弁護士を多数輩出しても市民にとっては迷惑なだけだと思います。
 

pagetop