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法曹人口と法曹養成の危機打開のための提言(その2)

2012.09.01

 

「法 曹 人 口 と 法 曹 養 成 の 危 機 打 開 の た め の 提 言」の後半部分です。

 記

3 司法試験の受験資格の制限(司法試験法4条)の撤廃
(1) 法科大学院志願者が、激減を続けて本年も前年より1400人少ない5801人であることから、3年後には志願者が三千数百人、入学者が二千人程度、非法学部出身者が十数%に減少することが予想される。
日弁連の本年7月の「法科大学院制度の改善に関する具体的提言」は、法科大学院制度と受験資格制限の存続を前提としているが、会員の多数意見と乖離している(本年の全弁護士対象のアンケートで、法科大学院で質の高い法曹養成を達成しているかの設問に肯定の回答12%否定の回答69%、法科大学院制度に賛成26%反対51%、受験資格制限に賛成23%反対64%)。日弁連提言は、法科大学院の校数と学生数の削減及び実務家重視を唱え、大学に不可能事を強い大学の自治を侵害する内容になっている。
法科大学院志願者数の激減は、莫大な金と時間を要すること、就職難、弁護士の仕事の減少及び我が国の司法のあり方などに起因する。仕事が減少し魅力を失った分野に金と時間を使って参入する人の層に偏りが生じ、人数も限られる。その結果、法曹のあり方が変質させられ、職務の独立性を危うくする。
法科大学院修了を受験資格にすることは、法曹を目指す者への参入障壁にほかならず、試験の公平性・開放性を害する。それを続けるならば、法曹の給源の狭小化と志願者の激減に歯止めがかからず、法曹界に来る有為な人材が少なくなる。本年度の短答式試験で、予備試験合格者は85人中84人(1人途中退席)で合格率が100%であり、まずは、予備試験らしく簡略化し合格枠を広げることが公平である。
(2) 法科大学院修了後に5年間で3回に受験制限をしているが、個別事情を無視して、修了直後から受験を強いたり、法曹を志して何年も努力する自由を奪う受験回数制限に合理性はなく、余分な精神的圧迫という弊害を生んでいる(上記アンケートで、3回又は5回制限に賛成合計30%、回数制限に反対62%)。
4 前期修習の復活、給費制の復活
法科大学院制度は、法学部と司法修習が存在しない判例法の国の制度であり、法学部教育、法学研究、研究者養成を困難にしている。司法試験に合格していない法科大学院の段階での法曹実務教育は不合理であり、司法修習が法曹養成の中核に位置づけられなければならない(アンケートで、2年修習復活に賛成61%、反対21%)。
司法修習生の質の低下問題に対処するには、少なくとも司法試験合格から実務修習までの前期修習を復活させることが不可欠である(上記のアンケートの結果は、前期修習を復活させるとの回答が88%)。
司法は、三権分立の一翼を担い、国政の中で、国民の人権擁護と社会正義の実現をはかる最後の砦として重要な役割を負い、弁護士は、その司法において重要な役割を担い、公共的な業務を行っている。弁護士が裁判官・検察官と平等に公費で2年間充実した養成を受ける制度は、歴史の教訓からであり、戦後改革の統一修習制度を維持することは、我が国の司法及び国民にとって極めて重要な意義がある。
                    以上

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