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業務拡大は終わっている?!

2012.06.04

 

 ある会合で、「今年は業務拡大元年です。これからが業務拡大の始まりです。武本さん。法曹人口だけでなく、業務拡大のことも考えたらどうですか。」と言われました。

 その場で反論したかったのですが、私は客席、その方はマイクを持って壇上から言われたので物理的に反論ができませんでした。

 まず、皆さんは、日弁連が何十年前から業務拡大を叫び、各単位会でも業務拡大委員会等で日夜ひとかたならぬ努力を全国各地で行っているか、ご存じでしょうか。

 1985年に「弁護士業務対策シンポジウム」と題して始まった2年に1度行われる弁護士業務改革シンポは、昨年11月で17回目を迎えました。来年は神戸で第18回目の業務改革シンポが行われる予定ですが、なんと日弁連の業務改革は、30年を超えようかというところまで来ています。

 ちなみに、繰り返しますが、任期付き公務員や企業や地方公務員、或いは、議員秘書といった弁護士以外の職業になるという話は、弁護士の業務拡大と言えるかどうかは微妙です。もともとこれら業務は弁護士の本来的な弁護士の業務には含まれていなかったからです。弁護士の業務をこれまでの弁護士業務限らない業務まで広く捉えれば、かつかつ業務拡大と言えないでもありませんが、全ての修習生の就職先を確保できるにはほど遠い状況です。

 それはさておき、日弁連が、或いは、各地の単位会にいる弁護士が英知を絞って30年経っているのに、さしたる業務拡大が成功したとの気配はありません。
 
 もし、業務拡大が成功しているのならば、これほど酷い就職難が生ずるはずがないからです。

 私が事務局長をしている法曹人口全国会議のメーリングリストでは、就職先のない弁護士有資格者が某有名ビデオレンタルでアルバイトをしていることが話題になっています。 

 就職先がなく、かといって、弁護士登録をすると高い弁護士会費を支払わなければならないわけで、仮に、即時独立したとしても先輩弁護士の指導を仰げないことから来る依頼者等とのトラブルや弁護過誤、或いは、赤字経営のリスクを抱えているのですから、そう簡単に弁護士登録をするわけにもいかないのだと思います。

 アルバイトをしている有資格者は、「高い学費と長い年月もかけて法科大学院に通い、1年の司法修習を経てどうしてこんなことになっているのでしょうか。」と嘆いておられるそうです。

 この嘆きはごもっともです。
 
 業務改革を叫ぶ方々は、業務拡大を成功させて、一刻も早く、このような有資格者を救うのが責務なのではないでしょうか。
 
 自分の過去の行動に対する言い訳のために業務拡大のお題目ばかりを唱えるのはもう止めて戴きたいものです。
 
 

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