最新情報詳細 一覧へ

< 一覧へ

法科大学院制度の改善に関する具体的提言案

2012.04.08

 

 現在、日弁連から各単位会に「法科大学院制度の改善に関する具体的提言案」なるものについて意見照会がされています。

 これまでにも日弁連は、法科大学院に関する意見書を次々と発表してきました。意見書の内容は、いずれも法科大学院制度を礼賛し、或いは、法科大学院制度を温存するために他の制度を変容させるべきといった内容のものばかりでした。

 例えば、昨年3月27日には、「法曹養成制度の改善に関する緊急提言」という意見書(http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/110327_3.pdf)が出されました。
 その提言の趣旨には、
 「3.司法試験への対応が法科大学院教育に好ましくない影響を与えている現状に鑑み、司法試験の在り方を見直すこと」
 「4.司法試験の受験回数制限を当面の間5年5回等に緩和すること」
 「5.予備試験については、」(中略)「法科大学院を中核とする法曹養成制度の理念を損ねることのないよう運用すること」
といった内容が記載されています。

 司法試験は、法科大学院制度のために存在するものではありません。
 「司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験」(司法試験法第1条)なのです。
 従って、司法試験が法曹になろうとする者の学識及び応用能力について判定するにあたり何か不都合があるならば、その在り方を見直す必要はあります。しかし、法科大学院の教育に不都合が生ずるから司法試験の在り方を変革すべきということはあり得ません。

 予備試験も同じことです。
 予備試験は、「司法試験を受けようとする者が(法科大学院修了者)と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的」(司法試験法第5条)とした試験です。

 司法試験も予備試験も法曹になろうとする者が法曹としての法的素養に問題があるか否かを判定する試験であって、法科大学院制度のために存在する制度ではないのです。

 法科大学院も法曹を養成する制度である以上、法科大学院の教育内容が適正な法曹を養成していないというのであれば、法科大学院の教育内容の方を見直すことこそあれ、司法試験制度や予備試験を法科大学院の教育内容にあわせるなどといったことはあり得ないのです。

 法科大学院制度に疑問を持っている弁護士の数は多いのに、このような不合理な意見書が日弁連として頻発して出されています。
 一番の問題は、このような法科大学院に関する不合理な意見書が頻繁に出されていることをほとんどの弁護士が知らされてこなかったことです。

 今回、各単位会に意見照会されたのは、非常に珍しく、宇都宮会長だからこそ実現できたものでしょう。
 
 宇都宮会長時代の昨年、私たち法曹人口政策会議の委員と法科大学院委員会の委員、そして、修習委員会の委員が意見交換をできたのも過去の歴史を振り返れば画期的でした。

 会議に参加した委員は、画期的だと言うことを会議の冒頭でいやがおうでも思い知らされました。
 なぜなら、法科大学院の委員の発言があまりにも独善的で、これまで一度も批判にさらされたことのないことが一目瞭然だったからです。

 次回の日弁連会長選挙の結果がどうなるかはわかりませんが、「皆さん、このような意見書を日弁連が出してしまって本当によいのでしょうか。」という問題意識を各単位会及び会員に投げかけた宇都宮会長の功績は大きいと思います。

 各単位会から日弁連に対して「法科大学院制度の改善に関する具体的提言案」に対する意見を是非とも出しましょう。

 ※各単位会に提言案がありますので、未だ見ていない方は、所属単位会にお問い合わせください。
 
 

pagetop