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法曹人口問題に関する国際フォーラム(3)

2011.05.10

 

 諸外国の弁護士が「弁護士人口が増える」ことによるメリットとしてあげておられたのは、「依頼者にとって選択肢が増える。」、「弁護士費用が安くなる。」、「弁護士にアクセスしやすくなる。」、「法律事務所が新たに弁護士を雇うのが簡単になり、サラリーも低く抑えることができるようになった。」ということでした。

 「依頼者にとって選択肢が増える」とのことですが、これは、弁護士を増やせば増やすほど、誰でもが弁護士になれるようにすればするほど、依頼者にとって選択肢が広がることになり、市民にとって良いことになるはずです。
 しかし、例えば、製品を粗製乱造して、粗悪品や検品を十分にせずに、何でも市場に並べて、市民に「さぁ、選択肢が広がったでしょう。」と言っても、市民にとって有難いことではありません。重要なのは、市場に並べられた商品が一定の品質と安全性を備え、消費に耐えられる製品であるか否かなのです。
 弁護士の数を増やしさえすれば、依頼者の選択肢が増えて喜ばしいという意見は、この観点に対する配慮が決定的に欠落しています。
 国際フォーラムでも、某国の弁護士がいみじくも「重要なのは、弁護士の質であり、数ではない。」と発言された通りであると思います。

 「弁護士が増えれば弁護士の費用が安くなる。」というのは、ある時期、ある程度は妥当しますが、沸点を超えるとそれは妥当しません。弁護士業務を営むには、事件数がどんなに少なくても必ず必要となる一定の経費があります。例えば、これまで、100件の事件でこの経費をまかなっていたのが10件でまかなわなければ赤字経営になるという場合でも、弁護士費用が必ず安くなると言えるでしょうか。
 この点、すなわち、弁護士の数が増えることにより弁護士にかかる費用が必ずしも安くならないということは、アメリカの弁護士事情を見れば明らかです。

 「弁護士へのアクセスがしやすくなる」という点ですが、最近は弁護士の広告規制が緩和され、弁護士の広告をテレビや電車のつり革広告等で見ない日はなくなり、弁護士へのアクセスがしやすくなったようにも見えます。しかし、これは、弁護士の数の問題ではなく、広告規制その他弁護士業務のあり方の問題です。弁護士の数とは何の関係もありません。

 最後の「法律事務所が新たに弁護士を雇うのが簡単になり、サラリーも低く抑えることができるようになった。」というに至っては、一体全体誰のための弁護士増員なのかとあきれるほかはありません。
 これがメリットというのであれば、経営弁護士のための弁護士増員でしかないでしょう。

 法曹人口に関する国際フォーラムでは、私が記憶する限り、これ以外に弁護士の数が増えることによるメリットはどなたからも提示されませんでした。

 結局、日本以外の諸外国で行われている弁護士人口の急増政策は、一体誰のための、いかなる改革なのか。。。

 法曹人口問題に関する国際フォーラムに参加して、あらためて、弁護士増員の意味を考えさせられるようになりました。

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