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敗軍の将、兵を語る

2010.04.13

 

 2010年4月5日付けの日経ビジネスという雑誌に先の日弁連会長選挙で負けた山本剛嗣氏が「それでも弁護士の増員を」という題の文章を載せておられます。

 その記事には、「弁護士を増やす意義は、国際競争を勝ち抜くことにあります。」「競争力を高めるには、司法試験の合格者を増やして医師や技術者や科学者ら、より豊富な人材が弁護士を目指せるようにすべき」で、「こうした有能な人材を増やし、国際競争に対応しなければなりません。」と書かれてあります。

 しかし、本当にそうなのでしょうか。すなわち、弁護士を増やせば国際競争力が増すと言えるのでしょうか。あるいは、弁護士の数を増やせば有能な人材が集まるのでしょうか。答えは「否」でしょう。実際には逆の現象が起こるはずです。

 すなわち、自由化が進み、規制緩和されることにより、外資といった宣伝力等資本の大きな事務所が他の事務所の買収を繰り返し、一般の弁護士は大資本の傘の下に入るほか生き残る道はなくなります。そうなれば、弁護士が少数者の人権擁護のために国家権力と闘うなどということは「夢のまた夢」。弁護士自治もいずれ完全に失われることになります。弁護士の経済的自立性や精神的自立性が失われることにより、弁護士の質の低下はこれまで以上に激しいものになるでしょう。

 実際、弁護士が増えすぎて就職先も仕事もないので、優秀な人が司法試験を避ける傾向が高まっており、有能な人材はむしろ減少傾向にあります。
 
 このようにして、弁護士の激増により個々の弁護士の競争力が益々失われつつあるのに、弁護士全体の国際競争力など到底強化され得るはずなどないでしょう。

 他の業種でも、規制緩和・自由化の先にあったものは、自国の産業の衰退であり、格差拡大により一般国民の貧困化が進み、焼け太りしているのは外資ばかりで、自国産業の国際競争力は失われる一方です。

 少し考えれば、国際競争力を高めるためにも弁護士の急増は避けなければならないとの結論になるはずです。
 何故弁護士を激増させれば国際競争力が高まるのか、日経ビジネスの記事を読んでも全くわかりません。

 一歩間違えば日弁連の会長になろうかという方の発言なのですから、もう少し誠実に議論して戴きたいものです。

 

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