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「英検1級」と「弁護士資格」

2009.11.11

 

 最近は、弁護士資格を持っている人が弁護士にならず、地方公務員や会社員などほかの職業に就くことも多いそうです。
 他の仕事に就くのは、「弁護士になっても就職先もないし、食べていけないから弁護士になってもしようがないから。」だそうです。
 
 司法制度改革審議会の議事録を見ると、「司法試験合格者の人数を制限せず、誰でもが弁護士資格を取得できるようにすべき」「上から何人というのではなく、(英検1級のような)普通の資格試験にすべき」といった意見のオンパレードです。

 今まさに、司法制度改革審議会での議論が現実化しているわけです。

 弁護士が「人数制限をすべき」と言うと「それは、『科挙』と呼ばれた時代への郷愁」とか「自分が『エリート』と言われなくなるのが悲しいのか。」等々といった批判を受けます。

 しかし、この批判は的外れです。
 英検1級の資格を誰でもが持てるようになっても、英検1級で人を傷つけたりすることはありません。しかし、弁護士は違います。

 弁護士激増政策は、医師に置き換えて考えるとわかりやすいと思います。

 例えば、誰でもが医師免許を持つことができるようになったらどうでしょうか。
 医師になるための試験が簡単で、研修医としての実地訓練を受けなくても医師として開業できるようになったら、皆さんはどのように思われるでしょうか。患者からは、誰が医療知識が豊富で、実地訓練を受けた医師なのか、そうでないのかは、わかりません。

 巷にそんな医師があふれるようになったら、安心して通院することができますか?

 現在の弁護士激増政策は、医師にたとえて言うなら、このような事態を招こうとしているわけです。

 弁護士は、人を救うという面も持ちますが、他方、人を傷つける職業でもあります。
 弁護士から警告や催告の内容証明郵便を送ると、それを受け取った相手方当事者がいかに傷つくかは、私たち弁護士が日常的に経験することです。裁判でも一方の弁護士の書いた書面が相手方当事者を傷つけてしまいます。
 裁判で勝てば相手の財産を差し押さえることもあります。
 弁護士の仕事は、「両刃の刃」という側面を持っているのです。
 また、悪用しようと思えば、いくらでも悪用することができます。
 さらに、一歩間違えば、取り返しのつかない非常に重大な結果をもたらしかねません。
 医師が手術後に「失敗しました。」で許されないのと同じく、弁護士も「失敗しました。」では済まされません。
 
 このような人を傷つける危険のある弁護士資格を誰でも簡単に取得することができ、弁護士になった後の実地訓練を受ける機会がなくなれば、ほかならぬ市民が迷惑を被ることになるのです。

 だからこそ、現在の流れに反対しているのですが、なかなか理解してもらず、卑劣な批判ばかり受けるのは本当に残念です。
 
 
 
 
  
 

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